1月の「あったか読書会」より

1月の「あったか読書会」より

2016年 初春の読書会は 参加者3人の こじんまりした会となりました。

そのぶん、ひとりの話に 長く じっくり 耳を傾ける時間でもありました。

美しき日本の心、詫び寂びの心など、本のタイトルとともに ご紹介いたします。                                                                                       report:F.O

          あいしてる なんて言へない しゃぼん玉

               福島県飯館村「あいの沢」の愛の句碑(撮影:2008年ごろかな)

 

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 ● Cさん

 

 ◆『愛あふれる村 いいたて』

 

                    飯舘村:発行

 

2007年に福島県飯舘村が発行した、写真つきの豪華な句集。

「愛」をテーマに全国から募集された17字の俳句を、 

飯館村の四季を写した彩りゆたかな写真とともに楽しめる。

 

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  (俳句の碑 写真撮影者Iより、ちょっとだけ)⇒ ⇒ ⇒

 住む人々の 優しさあふれる飯館村が好きで 時々訪れていた

 飯館村では、選者に黛まどか氏を迎えて「愛の句碑事業」を実施。

全国から集まった1万句の中から選ばれた250句を、村の特産の御影石に刻み

「あいの沢」公園に設置した。句集もその一環として出版されたもの。

自然豊かな公園を散歩しながら句碑を読むのが楽しみだったが、原発事故で全村避難となった飯館村。

 村人たちは、「愛の句碑が村民の帰りを待っている」と心の拠りどころにしているという。

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読書会のおこなわれる「あったかるーむ」書架に置いてある句集を、

朗読をたしなまれるCさんが手に取って、いろいろ読んでくださった。

素朴であたたかい俳句が たくさん並んでいる⇒ ⇒ ⇒

 

 亡き母の車椅子置く花の下

 

 さわらびやふる里の風うまかりし

 

 風船の足らぬ子の息父が足し

 

「愛あふれる村」の書名通り、あたたかい眼差しで詠まれた句ばかりだ。

この句はどんな意味だろう? と皆で話し合いながら、

Cさんの 穏やかな声で よまれる句に聴き入った。

 

飯舘村は、東日本大震災の原発事故の影響で人が住めなくなった。

この本は震災前に編まれたものだが、飯舘村の自然や祭の写真、

身近な人への愛をうたった句に接していると、

悲喜こもごも 様々な思いが湧きあがってくる。

 

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● Mさん

 

 『美しい日本の私』

 

            川端 康成:著 

            エドワード・G・サイデンステッカー:訳 

            講談社現代新書:刊

 

日本人ではじめてノーベル文学賞を授与された作家、川端康成の、

その授賞式でおこなった日本語スピーチの全文を記した本。

 

日本のもつ侘び寂びの気風、なにもない空間に美を見いだすという

つつましさを感じられる本だ。

サイデンステッカー氏による英訳が付されている。

 

冒頭では、道元の歌を引用。

 

 春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて冷(すず)しかりけり

 

この歌をみると、昔の「美しい日本」がしのばれるようだ。

四季のある国で、つつましく、自然に感謝をもって生きていたのだろうと。

今もその感性は私たちの中にあるのだろうが、

混沌とした現代を生きるうちに、忘れたり、見えなくなっているのかもしれない。

 

読書会では、今の時代について、こんなことを話し合った。 

今は いろいろ便利になって たとえば24時間あいているお店もある。

その豊かさの恩恵を私たちは受けているわけだが、

お店で夜に働く人の健康がそこなわれ、食品もどんどん廃棄されている。

 

最近の、廃棄食品の横流しに関するニュースに心を痛めた方も多いのではないか。

 

それはやはり、川端康成の言った「美しい日本」とは異なる姿だ。

この国に住む人々が、もっと慎ましくしなければいけないのかもしれないね……

と、しんみりした気持ちになった。 

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 ● Oさん

 

 『さようなら、オレンジ』

 

                   岩城 けい:著 筑摩書房:刊

 

2014年本屋大賞、第8回大江健三郎賞など、さまざまな賞を受賞した中編小説。

 

アフリカ難民の女性、サリマが主人公。

彼女と、周りの人々がオーストラリアの田舎町で懸命に生きていく姿を描く。

 

サリマは夫に逃げられ、精肉作業場で働きながら二人の男の子を育てている。

母語の読み書きもままならない彼女は、子どもにも軽んじられている。

英語を学ぶために職業訓練学校に通いはじめたサリマは、

様々な経験をして自分の誇りを取り戻していく。

 

サリマと同じ職業訓練校に通う、日本人留学生の女性が大学に通うことになり、

精肉を加工して働いている自分との差を感じて苦しくなることもある。

やがてその日本人留学生の女性にもつらい試練があったことを知り、

サリマも友として寄り添っていく。

 

サリマが耐え忍んで働き、学んでいくうちに、周りの人との絆も育まれていく。

その絆の描かれ方が丁寧で、読んでいるとしみじみ感動してしまう。

 

子どもにも馬鹿にされていたサリマが、実は様々なことに耐え忍んで生きてきた

ことを、当の子どもが知るシーンもある。

そうした、一見しただけでは分からない人の事情や、それに伴う心の動きなども

この本には丁寧に描写されている。

 

「まわりの人たちと仲良くなる素朴な話は、ハッピーでいいね」

と、読書会のメンバーたちと うなずき合った。

 

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次回→ と き: 2月23日(火)13:30~

 

    ところ: あったかこころねっと

 

    お問合せは⇒ 022-211-4020 

           留守電の場合は、ご伝言をお願いいたします。

 

   ご参加お待ちいたします。

           福島県飯館村のひまわり畑(2008年・夏)