6月の「あったか読書会」より
もうすっかり梅雨、定禅寺のケヤキも雨に打たれて喜んでいるようです。
読書会の日はめずらしく晴れて、傘のいらない日となりました。
report:F.O
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● Iさん
◆『1%の力』
鎌田實:著 河出書房新社:刊
100%の力を注ぎながら「もう1%」が大切であることに気がついた。
そんな哲学を、医師である著者が患者との実体験を交えながら記している。
100%の力で人に尽くすのは難しいが、1%なら誰かのために生きることができる。
私たちは日々頑張って生きていて、ストレスでいっぱいになることもあります。
そんなとき、ふと空を見上げると…生活の中では1%くらいのことだけれど、
そのたった1%が気持ちを切り替えてくれる。
頑張っているとき、疲れているとき、この本をひらいて読むといい。
ページはどこでもいい。
嫌なことがあったとき、ふっと気持ちを切り替えてくれるだろう。
◆『いつかぼくもビーズになる!: よっくんのポエム』
米野嘉朗 米野綾子:著 東方出版:刊
難病により12歳で世を去った「よっくん」こと米野 嘉朗の詩集。
共著の米野 綾子はよっくんのお母さんだ。
タイトルの「ビーズ」には、こんな意味がある。
人生はモザイクの絵のようなもので、悲しみの連続である。
だから、やさしくないといけない。
かなしみのビーズの横に、夕日のうつくしさを感じるビーズがある。
その夕日をうつくしいと思う心が、人生を慰めてくれる。
上で紹介した『1%の力』の中も、この本のことが紹介されている。
荒波のような人生を生きるにはやさしさが必要、という詩を遺したよっくん。
1%でいいから人にやさしく、というメッセージを感じる。
難病と闘いながら、人の心に訴える詩を書いた12歳の男の子に、
読書会のメンバーも尊敬と感謝の気持ちを抱きました。
◆『ブッダの幸せの瞑想』
ティク・ナット・ハン:著 島田啓介:訳 東方出版:刊
仏教僧であり、瞑想指導者でもある著者の瞑想実践ガイドブック。
著者のティク・ナット・ハンは「マインドフルネス」を世界中に広めた。
マインドフルネスは「心のエクササイズ」ともいわれる。
ストレスで心がいっぱいになったとき、目を閉じて深呼吸することで
否定的な感情から脱し、自分を取り戻すことができる。
本書では、日々の生活で実践できる瞑想法について書かれている。
食事のときに自分の体へ意識を向けること、体をいたわる気持ちを持つこと。
マインドフルネスの呼吸法も難しいものではなく、すぐに実践できるものだ。
上記2冊でも紹介してきた、1%の力でできる息抜きになる。
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● Oさん
◆『夜市』
恒川光太郎:著 角川書店:刊
第12回(2005年)日本ホラー小説大賞を受賞した、作者のデビュー作。
なんでも売っている「夜市」に迷い込んだ小学生の主人公は、
弟を対価にして「野球の才能」を買う。
家に帰ると、この世のどこからも弟のいた痕跡が消えていることに気づく。
大学生になった主人公は、クラスメイトの女の子に夜市への同行を頼む。
消えてしまった弟を買い戻すために。
民話のような不思議な世界観で、予想もつかない展開でストーリーが進む。
主人公は弟を取り戻すことができるのか、そもそも弟は生きているのか。
この世ならざるものが闊歩する不気味な夜市を歩きながらその謎を追い、
予想のつかないどんでん返しと、悲しい結末にたどり着く。
紹介者のOさんは高校生の時にこの本を読み、「後味悪いなあ」と思った。
その後味の悪さも味わい深いもので、今でも忘れられないという。
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● Mさん
◆『アポリア: あしたの風』
いとうみく:著 宍戸清孝:写真 童心社:刊
大地震が発生した首都に住む、中学2年生の男の子を主役にした長編小説。
タイトルにもなっている「アポリア」とは、「解決の糸口を見いだせない難問」、
転じて「道のないこと」という意味のギリシャ語。
大地震と津波に襲われて母を失った主人公は、「なぜ自分が生き残ったのか」と
深い苦悩に陥る。
自分よりももっと生きる価値のある人がいた、という主人公の苦しみは、
東日本大震災が発生したときに多くの人が感じたものだ。
本書には、ところどころに震災の写真が挟まれている。
個人のトラウマを想起させない程度の瓦礫の写真は、挿入方法もおしゃれ。
本のラストには見開きで桜の写真が掲載されており、希望を感じさせる。
写真家、宍戸清孝のモノクロ写真を眺めているだけでも胸に迫るものがある。
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次回→ と き:7月?日(土)13:30からを予定しています。
日程は決まり次第、お知らせいたします。
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