雪の舞う、寒い季節になりましたね。
今回は「あったかるーむ」が二階に移動して、初めての読書会でした。
冬枯れの木々を眺めながら、本と食べものの話で盛り上がりました。
report:o.F
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Tさん
◎「文人悪食」 嵐山光三郎:著 新潮文庫:刊
明治の文豪を「食」から読み解く。
夏目漱石、森鴎外、中原中也など、三十七人の食生活のエピソードが紹介されている。
巧みな文章は、「何を食べたか」という日常の話も、
別世界のことのように楽しく読ませてくれる。
紹介される全員が食に興味をもっていたわけでなく、
お酒しか飲まない人や、そもそもあまり食べないという人も。
何をどう食べるか、という観点から文豪の人となりも見えてくる。
たとえば石川啄木の有名な歌に、こんなものがある。
「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」
実際の啄木は高給取りだったが、お酒が大好きで飲み屋で豪遊していたという。
人の能力と人格とは一致しないものだなあ……と、読書会メンバーもしみじみ。
明治の食文化についての認識が分かるのも面白い。
洋食が盛んに入ってきた時代で、夏目漱石や森鴎外はビフテキをよく食べていたという。
永井荷風などは「米より、肉やパンを食べる方が、頭もすっきりして体も丈夫になる」
と唱えた。
現在では、和食は健康にいいとされ、世界文化遺産にも認定されている。
食べるものへの考え方も、時代によって変わっていくものですね。
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Oさん
◎「スナーク狩り」 ルイス・キャロル:著 トーベ・ヤンソン:絵
穂村弘:訳 集英社:刊
「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルが書いた話に、
「ムーミン」シリーズの作者トーベ・ヤンソンが絵をつけ、
歌人の穂村弘が日本語に訳した、なんともぜいたくな本。
誰も見たことのない怪物スナークを捕まえるため、
船長のベルマンは8人の仲間をつれて出航する。
そのメンバーは、靴磨き、帽子屋、弁護士、ブローカー、ビリヤード・マーカー、
ウェディングケーキしか作れないパン屋、
さらにはビーバー、そしてビーバーしか捌けない肉屋。
冒険に向いてなさそうなこのメンバーが、白紙の海図を頼りに
スナークを探していくのだ。
この話はナンセンスな不条理もので、読んでいても意味が分からないことが多い。
たとえば怪物スナークを捕まえる方法として、こう書いてある。
「細心の注意をもって指貫で探すのがいい
ぴかぴかのフォークと希望で狩りたてて
鉄道株で脅かして
笑みとシャボンで金縛るべし」
どういうことかは分からないが、ともかくこれでスナークは見つかる。
そして一行は怪物の恐怖に晒されることになる。
穂村弘が訳した文章は長歌形式で、読んでいると心地よいリズムだ。
「五・七」のリズムを任意の回数くりかえして、最後を「五・七・七」で締める。
そこにトーベ・ヤンソンの描いたイラストが華を添えていて、
眺めているだけでも楽しい一冊だ。
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Mさん
◎「99歳、現在進行形ね。:楽しく生きる心がけをお話しします」
笹本恒子:著 小学館:刊
99歳にして現役カメラマン、笹本恒子の言葉集。
1914(大正3)年に生まれた著者は、1940年に日本初の女性報道写真家となる。
しかしカメラマンとして食べてはいけず、
得意の裁縫を生かして服飾店を営むことになった。
1985年、71歳でカメラマンに再就職。99歳になった今でも現役で活躍している。
著者はどんなに忙しいときでも自分で食事を作っていたという。
どんな時でも自分の体を自分で作ってきた。
食の大事さを改めて感じるエピソードだ。
なんといっても表紙の笑顔の素敵なことに、読書会メンバーの顔も綻びました。
◎「土恋いのうた」 大野源二郎:著 秋田魁新報社:刊
昭和30-40年代の農家のくらしを撮った、モノクロ写真集。
農作業の様子、花嫁行列、集団疎開など、当時の日本をいきいきと写しだしている。
日本人が食を大事にしてきたことが、農作業をする人々の姿で分かる。
高度経済成長以前の暮らしには、綿々と受け継がれてきた伝統も宿っていたのだ。
読書会メンバーが、こんなエピソードを紹介してくれました。
農民の歌っている民謡を教わるには、一緒に農作業するしかない。
ただ歌としては歌わず、体を動かして作業しながら歌うものだからこそ、
胸にしみる「魂の歌」になる。
体を動かすこと、そして食べることについて、改めて考えさせられました。
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◆ 次回は⇒ 1月13日(火)13:30~
「あったかるーむ」で。。。