9月「あったか読書会」吉野弘詩集を読む

 

月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月

 

今年は 9月8日が 中秋の名月でしたね。

満月は その形から鏡にたとえられますが、

澄みきって少しの曇りもない満月は 月の真澄鏡。

これは 自分の姿を映す鏡ではなく 心を映す鏡とか。。。

 

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9月の「あったか読書会」、いつも参加される方たちの数人が

急に ご都合が悪くなられました。

というわけで、Iさんご紹介の「吉野弘詩集」をじっくり、

味わうことにいたしました。

 

I.Nさん

 

「吉野弘 詩集」  吉野弘 (1926~2014)山形県酒田市生まれ

 

やさしい言葉で ふつうに書いていて 読みやすい詩。

それでいて 心に深く響きます。

 

≪ 奈々子に ≫ (長女が生まれたときに書いた詩)

 

 赤い林檎の頬をして

 眠っている 奈々子。

  

   中略

 

 お父さんが

 お前にあげたいものは

 健康と

 自分を愛する心だ

 ひとが

 ひとでなくなるのは

 自分を愛することをやめるときだ。

 自分を愛することをやめるとき

 ひとは他人を愛することをやめ

 世界を見失ってしまう。

 

      後略

  

 

 ≪ 祝婚歌 ≫ (姪の結婚式に出席できないため、吉野弘が姪夫婦に贈った 

          詩。結婚式でよく読まれるという)

 

 二人が睦まじくいるためには

 愚かでいるほうがいい

 立派すぎないほうがいい

 

   後略

 

 

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今年の1月15日、吉野弘さんは、肺炎のため87歳の生涯を終えられました。

2月3日のNHK視点・論点で、詩人小池昌代が「吉野弘さんの詩を読む」をテーマに話しました。以下、少しご紹介・・・

吉野弘という詩人は、自分の経験を核にして、人間のありふれた日常から、

詩を汲み上げ、作品を書きました。こういう詩を読むと、わたしはいつも、

詩というのは贈り物なのだという思いを強く持ちます。

 

ものの見方ひとつで日常世界が変貌する。そのことが一編の詩のなかに

圧縮されて、再び現実の中に送り返されるーそういう意味での贈り物です。

 

日常の事物のなかから宝石を発掘する名手でもあった吉野弘さん。

そこに浮かぶ詩情は、雪の切片のようで、すうっと消えてしまうような

はかなさを持っています。

 

久しぶりに作品をひもときながら、

詩のふるさとに帰ってきたような思いがして、胸が熱くなりました。

 

吉野弘さんの詩は、心弱き人間が、

それでも顔をあげて生きていかなければならないとき、

そっとそばにきて支えてくれる、人間に必要な「詩」だと思うのです。

 

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 難解な詩が多いけれど

勧められて読んだ吉野弘の詩だったそうです。

 

                         つづく・・・

 

 

  

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